個人事業主のメリットやデメリットとは?法人や会社員との違いも紹介
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個人事業主とは?
個人事業主とは、株式会社などの法人を設立せず、個人で事業を営んでいる人を指します。事業を開始した際、税務署に「個人事業の開業届出」を提出・申請することで個人事業主として独立したことになります。
>> 個人事業主のなり方を解説|メリットやデメリットも把握しておこう
似たようなワークスタイルにフリーランスが存在しますが、フリーランスは開業届を提出せず、案件ごとに契約を結び業務を行う点が個人事業主と大きく異なる点です。しかし税務上では、フリーランスも個人事業主の一種としてみなされます。
出典:No.2090 新たに事業を始めたときの届出など|国税庁
参照:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2090.htm
法人との相違点
個人事業主と法人では、主に設立・廃業時において税金の仕組みに相違点があります。個人事業の設立は、開業届の提出のみで手続きが完了することに対し、法人は株主などが出資して設立するため、登記や定款の作成が必要となります。
また、廃業時も相違点があり、届け出の提出のみで手続きが完了する個人事業に対し、法人は解散や清算の登記など、時間と費用が必要です。
さらに個人事業は所得に比例して税率が高くなりますが、法人はある程度税率が決まっているため、利益によっては個人事業に比べ有利になる場合があります。
会社員との相違点
個人事業主と会社員では、社会保障面に相違点があります。個人事業主は、会社に雇用されず独立して自ら仕事を請け負います。そのため、雇用保険はもちろん、厚生年金や健康保険など、会社が用意する社会保険へ加入できません。納税も、自ら確定申告を行う必要があります。
会社員は、組織の一員として会社の方針や指示に従って仕事を行い、会社の社会保障制度に加入できます。残業手当や有給休暇が取得できるほか、納税に関する手続きも会社が代行します。
また、勤務時間や受注する仕事などは自分で決められる個人事業主に対し、会社員は会社の規定に従う必要があるため、ワークスタイルも大きく異なります。
エンジニアとして個人事業主になるメリット9つ
個人事業主として独立を検討する際は、どのようなメリットがあるのかを把握しておくことで、開業後の変化を具体的にイメージしやすくなるでしょう。
ここからは、エンジニアとして個人事業主になるメリットを9つ紹介していきます。法人や会社員との違いを踏まえたうえで、ぜひ参考にしてみてください。
- 払う税金が少なくて済む
- 開業手続きが早く済む
- 申告書の作成が簡単にできる
- 事務作業の負担が少なめである
- 能力により収入がアップする
- 働き方に自由度がある
- 開業場所は自分で判断できる
- いつまでも働きやすい
- 将来法人化できる
1:払う税金が少なくて済む
個人事業主は、利益によって払う税金が少なくて済みます。税負担は個人事業が所得税、法人が法人税となっており、個人事業では一定の利益(所得)までは払う税金も少なくなります。
そのため、事業の状況によって軌道に乗るまでは個人事業主として事業を行い、利益が増えてきたら法人化する方もケースもあります。
2:開業手続きが早く済む
個人事業主は、法人設立と異なり開業手続きが早く済みます。法人を設立する場合、発起人・取締役・株主の募集や定款の作成・登記など、多くの人が関わり、数週間~数ヵ月の時間に加え費用を要します。
それに対し、個人事業は税務署や市区町村に開業届を提出すれば手続きが完了するため、時間や費用を要さず開業できるでしょう。
>> 個人事業主になるメリットやデメリットは?必要な準備や開業届の書き方も解説
3:申告書の作成が簡単にできる
個人事業主は、税務に関する申告書の作成が簡単にできます。税務申告は法人が法人税、個人事業主が所得税となっており、法人税の申告は申告書や決算書の作成に専門的な知識や時間を要します。そのため、申告書の作成を税理士に依頼する法人も少なくありません。
それに対し、個人事業主は確定申告書の作成で税務申告が行えます。簿記の知識がない方でも経理ソフトを用いることで手軽に記帳できるため、申告も法人税に比べ手間がかかりにくいと言えるでしょう。
4:事務作業の負担が少なめである
個人事業主は、経理などの事務作業の負担が少なめです。法人を設立した場合、給与は会社から自分に支払うため、所得税や健康保険、厚生年金などの源泉徴収を行い納付する必要があります。
1人で事業を行う個人事業の場合、給与を支払う必要がないため、給与計算など経理の事務負担がありません。加えて、事業主は国民年金と国民健康保険に加入するため、手続きなどの事務負担は少ないでしょう。
5:能力により収入がアップする
個人事業主は、能力次第で収入アップが期待できます。会社員の場合、基本的に収入は給料制であり、携わる仕事内容も会社に関連する業務のみになります。そのため、優れた働きをしても収入は一定ということもあるでしょう。
個人事業主の場合は、仕事を請け負うためには営業が必要になりますが、自身の能力に適した仕事を選べます。自身の能力が高ければ大きな仕事を請け負うことも可能なため、収入面において向上が期待できるでしょう。
6:働き方に自由度がある
個人事業主は、就業時間が決められていないため、働き方に自由度があります。会社員の場合、出社時間や退社時間、休憩時間など就業時間が決められており、規定の時間通りに勤務する必要があります。
個人事業主は、就業時間はもちろん休みも自分の裁量で決められるため、例えば早朝から仕事を開始して、午前中に終わらせるということも可能です。このように、自由度の高い働き方ができるのも個人事業主のメリットの1つと言えるでしょう。
7:開業場所は自分で判断できる
個人事業主は、会社に所属しないため、開業場所を自分で判断できます。会社員の場合、場所は自分で選べず、基本的に勤務地まで毎日出社する必要があります。転勤を言い渡された場合、決められた場所に引っ越すこともあります。
個人事業主の場合、例えばパソコンで仕事を行えるのであれば、勤務場所を選びません。店舗を経営する場合は出勤する必要がありますが、店舗の開業場所も自分で判断できるため、勤務場所の自由度は高いと言えるでしょう。
8:いつまでも働きやすい
個人事業主は、定年がないため体力が続く限り働くことが可能です。会社員の場合、会社が定めた年齢になると、制度により定年退職する必要があります。
それに対し、個人事業主は年齢に関係なく働けます。自分で事業を行っているため、自身にスキルや実績があり、体が元気であれば長く活躍できるでしょう。
9:将来法人化できる
個人事業主として開業した場合でも、将来法人化することが可能です。その場合、法人設立の手続きや資産・債務の移行手続き、個人事業の廃業手続きなどを行うことにより、法人化できます。
個人事業主として軌道に乗り、一定以上の所得がある場合、法人化することにより税金面で有利になるため、利益が増えてきたタイミングで法人化するケースも少なくありません。
エンジニアとして個人事業主になるデメリット8つ
個人事業主になるにはメリットが多くありますが、その反面、デメリットもあることを理解しておきましょう。
ここからは、エンジニアとして個人事業主になるデメリットを8つ紹介していきます。自身に合った業務形態を選択するため、ぜひ参考にしてみてください。
- 融資審査の厳しさ
- 社会的信用の低さ
- 所得が増えることによる税負担
- 社会保険料も自己負担
- 求職者からの人気の問題
- 不安定な収入
- 確定申告の手間
- 経営悪化へのリスク
1:融資審査の厳しさ
個人事業主のデメリットは、法人に比べ融資審査が厳しい点が挙げられます。法人の場合、会計と個人と別であるため、事業資金と個人のお金との境目が明確です。
個人事業主は、事業資金と個人のお金との境目が曖昧になりがちなため、運転資金の融資審査は厳しい傾向にあります。そのため、個人事業主が金融機関からの評価を得るには、事業用と生活用の預金口座を分け、経理をしっかり行うことが重要です。
2:社会的信用の低さ
個人事業主のデメリットは、登記しないことによる社会的信用の低さが挙げられます。個人事業は、法人と異なり登記が必要なく、比較的簡単に開業や運営が可能です。
しかし、そのぶん社会的信用が低くなってしまい、中には個人事業主との契約はせず、法人との取引を望む企業もあります。開業のしやすさという大きなメリットがデメリットに転じてしまう場合もあるため、慎重な判断が必要です。
3:所得が増えることによる税負担
個人事業主のデメリットは、所得が増えることによる税負担が挙げられます。個人事業主が納める所得税は、「累進課税」と言い所得が増えるに伴い税率も上がる仕組みになっています。
所得が増えるほど支払うべき税金も増えるため、税金面で不利になるほか、個人事業税も課せられるようになります。
出典:所得税の税率|所得税|国税庁
参照:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
4:社会保険料も自己負担
個人事業主のデメリットは、社会保険料が自己負担であることが挙げられます。
会社員や短時間労働者の場合、週の所定労働時間が20時間を超えるなど、一定の要件を満たすことで社会保険に加入できます。また、社会保険は会社負担分があるため、保険料は企業と個人の折半になります。
それに対し、個人事業主は国民健康保険に加入することになるため、保険料は全額自己負担になり、社会保険に比べると保険料も高くなる傾向にあります。
出典:令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大|日本年金機構
参照:https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.html
5:求職者からの人気の問題
個人事業主のデメリットは、人材採用における求職者からの人気の問題が挙げられます。昨今では特に安定した雇用が求められており、厚生年金や健康保険の加入が義務となる法人に比べ、個人事業は社会保障の面で不利になりがちです。
また、個人事業は小規模な組織といったイメージもあることから、同じ条件でも法人に比べ求職者からの人気が低く、法人の方が人材を集めやすい傾向にあります。
6:不安定な収入
個人事業主のデメリットは、収入が不安定であることが挙げられます。会社員の場合、会社から毎月一定の収入を得られることが一般的です。また、会社の制度によってはボーナスを受け取れることもあるでしょう。
個人事業主の場合、労働した分の収入を得ることになり、会社員に比べると収入が不安定になる可能性があります。体調不良や営業活動が上手くいかないことによる業務量の低下などは、収入減に直結してしまうため、注意が必要です。
7:確定申告の手間
個人事業主のデメリットは、確定申告の手間が挙げられます。会社員の場合、税金は給与から天引きされ年末調整で過不足金を調整し、会社が代わりに納税を行います。
しかし、個人事業主の場合は自分で所得を申告し、納税する必要があります。年間売上や経費など、税金額を算出しなければならないため、会社員に比べ時間や手間を要します。
8:経営悪化へのリスク
個人事業主のデメリットは、経営悪化へのリスクが挙げられます。法人では赤字が出た場合、有限責任となり、自分が出資した範囲内で責任を負う形になります。
しかし、個人事業主は無限責任となり、赤字が出た場合でもあらゆる負債を個人で負わなければなりません。
例えば、借入金の未返済額がある状況で事業に失敗しても、個人事業主本人が全責任を負って返済しなければいけないため、法人に比べると責任の範囲が大きく、その分リスクがあると言えるでしょう。
デメリットを把握したうえでの個人事業主と法人の選択方法4つ
開業の際は、個人事業主のメリットやデメリットをそれぞれ理解したうえで、自身に合った業務形態を選ぶことが大切です。
ここからは、デメリットを把握したうえでの個人事業主と法人の選択方法を4つ紹介していきます。ぜひ自身のビジネスプランと照らし合わせたうえで、参考にしてみてください。
- 初めから従業員を雇用するかで決める
- 取引や契約条件を確認して決める
- 開業資金の調達方法を確認して決める
- 事業拡大するかで決める
1:初めから従業員を雇用するかで決める
個人事業主と法人を選択する際は、初めから従業員を雇用するかで決めましょう。
例えば事業開始直後に家族が従業員として在籍する場合は、個人事業が良いでしょう。事業開始直後から複数従業員を雇用する場合は、法人として事業を開始させるのがおすすめです。
どちらの場合も、給与を経費に計上することを踏まえ、個人事業と法人どちらの利益が高くなるのかを考慮して判断すると良いでしょう。
2:取引や契約条件を確認して決める
個人事業主と法人を選択する際は、取引や契約条件を確認して決めましょう。取引先によっては、取引を法人限定とし、個人とは契約を結ばないという恐れがあります。
そのため、事業の開始時にすでに見込み取引先がある場合は、あらかじめ取引や契約条件などを下調べしておく必要があります。
見込み取引先が個人事業主との取引を可能としている場合は、個人事業主・法人どちらでも良いでしょう。見込み取引先の条件が法人取引のみの場合は、会社を設立する必要があります。
3:開業資金の調達方法を確認して決める
個人事業主と法人を選択する際は、開業資金の調達方法を確認して決めましょう。開業資金を調達する際、金融機関が個人事業でも融資可能な場合は、個人事業主として事業を開始できます。
しかし、事業の立ち上げに協力してくれる人がいるなど、出資で資金調達をする場合は、出資の形がとれる法人を検討すると良いでしょう。
4:事業拡大するかで決める
個人事業主と法人を選択する際は、事業拡大するかで決めましょう。事業の状況によって利益が増えてきた場合、個人事業は法人に比べ、税金面で不利になることがあります。
所得(利益)が多くなるほど所得税も高くなる個人事業に対し、法人税は税率がほぼ一律であるため、事業の開始時に今後の事業拡大を視野に入れている場合は、法人を検討すると良いでしょう。
個人事業主が受けられる補助金・給付金助成金制度4つ
個人事業主は、個人で事業を行い規模が小さい分、経営が不安定になってしまうなど資金面で苦労してしまうことがあります。しかし、個人事業主が利用できる支援制度がいくつか準備されているため、把握しておくことで経営に役立つでしょう。
ここからは、個人事業主が受けられる補助金・給付金助成金制度を4つ紹介していきます。
- ものづくり・商業・サービス補助金制度
- 小規模事業者持続化補助金制度
- 雇用調整助成金
- IT導⼊補助⾦制度
1:ものづくり・商業・サービス補助金制度
ものづくり・商業・サービス補助金制度は、新製品やサービス開発、生産プロセスの改善等にかかる設備投資を支援する制度です。補助上限額は、一般型が1,000万円、グローバル展開型が3,000万円の支援が受けられます。
また、低感染リスク型ビジネス枠として、対人接触機会の減少に貢献する製品やサービス開発、生産プロセスの改善にかかる設備投資、システム構築等についても支援が受けられます。
例えば、通常枠では餃子全自動製造機の開発、低感染リスク型ビジネス枠ではAI等の技術を活用した遠隔操作等の機能を有する製品開発など、様々な事業で活用されています。
出典:ものづくり・商業・サービス補助金|独立行政法人 中小企業基盤整備機構
参照:https://seisansei.smrj.go.jp/pdf/0101.pdf
2:小規模事業者持続化補助金制度
小規模事業者持続化補助金制度は、販路開拓や生産性向上に取り組む費用等を支援する制度です。小規模事業者が持続的に事業を発展させていくため、経営計画を作成し、その計画に沿って行う取り組みを支援しています。
補助上限額は、単独申請が50万円、共同申請が500万円の支援が受けられます。活用事例としては、訪日外国人向けの英語表記メニューの作成や、提供方法の整備によるテイクアウトの強化などが挙げられます。
出典:小規模事業者持続化補助金|経済産業省 中小企業庁 ミラサポplus
参照:https://seido-navi.mirasapo-plus.go.jp/supports/758
3:雇用調整助成金
雇用調整助成金は、新型コロナウイルス感染症の影響により事業縮小を余儀なくされた場合に、休業手当などの一部を助成する制度です。従業員の雇用維持を図るために設けられた制度で、労使間の協定に基づき雇用調整を実施する事業主が対象となっています。
助成上限額は、1人1日あたり15,000円もしくは13,500円となっており、教育訓練を実施した場合は、さらに訓練を受けた労働者1人につき日額最大2,400円が加算されます。
出典:雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)|厚生労働省
参照:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html
4:IT導⼊補助⾦制度
IT導入補助金制度は、ITツールを導入する経費の一部を補助する制度です。自社の課題やニーズに合ったITツールを導入し、業務効率化・売上アップをサポートするために設けられた制度で、経営力の向上や強化を図ることを目的としています。
低感染リスク型ビジネス枠も設置されており、業務上での対人接触の機会を低減するといった、業務形態の非対面化に取り組む中小企業や小規模事業者等は、優先的に支援してもらえます。
出典:IT導⼊補助⾦|一般社団法人 サービスデザイン推進協議会
参照:https://www.it-hojo.jp/
個人事業主になるデメリットを知っておこう
本記事では、エンジニアとして個人事業主になるメリットやデメリット、法人や会社員との違いなどを紹介しました。
個人事業主は、働き方に自由度があり、能力による収入アップが期待できる反面、社会的信用の低さや収入の不安定さなど、デメリットもあります。
ぜひこの記事で紹介した個人事業主のメリットやデメリットを参考に、個人事業主と法人の設立、どちらを選ぶか検討してみてはいかがでしょうか。
【著者】
東京ITカレッジで講師をしています。
Java 大好き、どちらかというと Web アプリケーションよりもクライアントアプリケーションを好みます。でも、コンテナ化は好きです。Workteria(旧 Works)ではみなさまのお役に立つ情報を発信しています。
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